先進漁業への取り組み
もうかる漁業
早田大敷では、
平成29年に水産庁の「もうかる漁業創設支援事業」の採択を受け
4つの項目に分け“もうかる”先進漁業へ向けた経営の革新を行いました。
漁師の働き方改革
新漁船の導入
新規漁船の導入により、従来の2船 → 1船での運用が可能となり、少人数で網を持てるようになりました。
さらに、船体には新たにクレーン・投光器・大型カンコ(魚用の生け簀)を設置。
クレーンを使用することで、人力で行っていた魚を網から船へ掬い上げる力作業を大幅に簡略化。朝の暗い時間帯における操業時には、投光器を使用することで安全・確実に作業を行えるようになり、魚市場への出荷が早まることで魚価向上にも繋がります。
女性乗組員の受け入れ
早田大敷では、性別による雇用機会の区別をなくすため、2022年度より女性乗組員の受け入れを開始。
新漁船の導入により従来よりも乗組員に求められる筋力も少なくなったため、長年続いてきた「女人禁制」という風習を廃止しました。
トイレや更衣室など、設備面で追いついていない箇所はありますが、多様な乗組員の方々が働きやすい環境作りへ向けた課題解決に努めています。
定置網の形状の見直し
新漁船導入にあたり1船持ちへの対応と、箱網全体をフロートで浮かすことによって網への負担軽減、そして新たに『第三金庫網』を追加しました。
『定置網』とは大きく分けて、海を回遊する魚を定置網内に導く「道網(垣網)」
導かれた魚たちを囲う大きな「運動場(囲網)」、そしてそれらを一箇所に集めて捕まえる「箱網」で構成されます。
今回の形状の見直しにおいて、新たに「金庫網(落とし網)」と呼ばれる網を1つ追加しました。
「金庫網」とは、箱網に接続する形で一番後ろに設置され、主にブリ・ハマチなど大型の青物用の袋状の網のことです。
金庫という名の通り、一度入ると逃げ出せない構造になっており、今回の金庫網の追加により、豊漁の際により魚を逃しにくくなることが予想されています。
水産資源の管理・保護
幼魚の積極的な放流
大敷網漁は “待ちの漁” であることから、その性質上狙った魚種以外の魚も多く獲れてしまいます。
中でも特に、ブリの幼魚「ワカナ」や本マグロの幼魚「ヨコワ」といった『放流対象魚』が入った場合、いかに傷つけることなく元気な状態で逃すことができるかが大敷網漁の大きな課題でした。
早田大敷では、漁獲した魚を陸揚げする前に船上で選別(魚種ごとにより分け)することで、可能な限り元気な状態で放流対象魚をより分け。さらに新漁船製造の際に設置した、大型カンコ(生け簀)と海水用ポンプを使用して放流対象魚が元気になるまで活かすことで、可能な限り元気な状態で放流する仕組みを採用しています。
魚の鮮度の見える化
活け〆による漁価向上の取組み
定置網で水揚げされる魚は、その多くが「氷〆」で処理されます。
魚を氷水に入れて締める方法で、一度に大量の魚を処理できる反面、魚を暴れさせて体内に血が残ってしまう為、鮮度という点においては最善の方法ではありません。
早田大敷では、船上にブリ用の『活け〆装置』を設置。
水揚げの際に流れ作業で神経〆と放血を行い鮮度維持に努め、価値の高いアオリイカは1匹1匹手作業で船上活け〆。墨袋のクリップ留めし、早田大敷QRコード付きのタグ付けをおこなっています。
魚価の変化
このような“消費者目線で喜ばれる”取り組みにより、魚の鮮度・味を飛躍的に高めることで、少しずつですが変化がありました。購入されたお客様や、飲食店の方々が運営するSNSなどで嬉しい感想を頂くことが増え、消費者の方々に喜んでいただけるからと、仲買人の方々が “多少高くても早田大敷の良質な魚が欲しい” と魚価に反映されるようになり、現在では「早田の魚はちょっと違う」と認知され始めています。
早田漁師塾
尾鷲市の郊外に位置する早田では、若者の流出による人口減少・高齢化による定置網漁師の担い手不足に悩まされ、早くから市外・県外からの若手漁師の育成・確保や、魚価向上に向けた新たなる取り組みを積極的に行ってきました。
2012年より始まったのが『早田漁師塾』漁師の学校です。
全国より集めた少数精鋭の漁師になりたい塾生を早田町内で4週間かけて研修。
大敷を始めとした漁労作業・魚の扱い方などの基礎知識はもちろん、早田町での生活を通して移住体験してもらうことで、想像する”漁師“とのギャップを埋めるのに重要な役割を果たしました。